好きはきっと最高級

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コロナに揉みくちゃにされた就活の感覚

『何者』という朝井リョウ原作小説の映画を見た。リクスーに身を包み、合同説明会、面接、筆記試験に挑む姿。夜になれば就活生同士で集まり意見交換。その中でギクシャクしていく空気…を体感できる良い映画だった。

 …のだが、私にとっては、あー例年の就活生ってこんな感じだったんですね、と少し複雑な気持ちになった。

新型コロナウイルスの影響で、そんな就活とは程遠いものになったからである。

周りの人間から、影響を受けた就活ってどんな感じなの?と聞かれることが多かった為、一個人の事実録として、私が受けた影響をここに残しておこうと思う。


私自身は関西の大学に通う理系学生であることを前置きしておく。2019年秋ごろに就活を始めた。


はじめに、悪い影響について。


その1  合同説明会がない

なくてもよくね?と思うやも知れないが、個別説明会に行くほどではないが聞いてみたい、だとか、業界研究の為に類似企業を見ておきたい、とかいうゆるい願望には合説はぴったりだったのだ。あと純粋に合説=就活の恒例行事!のイメージがあったのでなんか寂しい。()


その2  個別の説明会もなかなかない

コロナの影響を受け、オンライン説明会をします!と迅速に動けた企業も多かったものの、その一方で『無理!ちょっと待って!』と言われ、純粋に説明会が後ろ倒しになっていく企業も多かった。会社によっては、前情報をろくにいれられず、エントリーシートを送らねばならず、これで通っててもどんな顔すればいいんだろう…と思ったりしていた。


その3 面接がほぼオンライン

私は、計25回の面接を受けたがそのうち、23回がオンラインでのものだった。

オンラインの利点も確かにあり、それは後述するとして、弱点も多く存在する。

まず、純粋に自宅にオンライン環境が整っていない場合である。大学生とはいえ、経済状況や自宅の状況は様々。個人でパソコンを持っていない人、Wi-Fiが通っていない人もいる。普段は大学でそれらを使えるが、大学も閉まっている。その準備にお金と時間がかかる。あと白い壁(背景)難しいよね。

それをクリアしたとて、お互いのオンライン面接の不慣れさがひどい。笑笑

企業側、就活生側ともに音声トラブル、電波トラブルがどうしても起こってしまい、ろくに面接が出来ないこともあった。操作があやふやな部分もあるし、これは慣れとしかいえないなぁ…とぼんやりしてしまった…

そういったトラブルなど自分の力量外の部分が作用するというのは、割と辛い。


対面の面接と比べて劣るなぁと思う点は、社員の方と触れ合う機会が減ることだ。

待ち時間ふと社員の方とお話しした事が、面接の中で知識として生かせたり、そういった部分で社風を感じることができる。しかし、オンラインでは、その面接をしている数分だけしか人事と話せる空間はないので、本来あったそういう時間が惜しいなぁと思った。


その4 グループディスカッションもオンライン

これは私の愚痴である。笑

選考の中で、オンライングループディスカッションをした。本来のグループディスカッションなら、テーブルごとに分かれた時点で、アイスブレイクの時間が作れたりしたことだろう。急に話し合えと言われ、しかもオンラインで相手の顔も伺いづらい、情報の共有もしづらいとなると難儀なことこの上なかった……でも、ニューノーマルな世の中に適応できる人材が欲しいという意味なら、これがうまければコロナ禍でも仕事ができるだろうということなのだろうなぁと口笛吹いて誤魔化しておく。


その5  ものすごく孤立する

地味にこれが一番キツイことかと思う。

就活というもの自体、個人技で、そもそも孤立するくない?と言われればそうかもしれない。

しかし、それこそ何者にあったように、『あ!お前もここの企業の筆記うけんの?同日?帰りご飯食べて帰ろうぜ!』みたいな事は一切ない。出来ないのだ。

大学に行って友達と会うこともないし、先輩とばったり会ってアドバイスをもらうことも、研究室の先生に『就活どうや?』と直接聞かれることもない。

偶然人と会える、という事がなくなった中で、家からも特に出ず就活をしなければならない。個人差がある事にはなるが、自分から相談する事が苦手な人にはとことん辛い。(そういう人はそもそも就活むいてなくね?というツッコミはさておき)本来ならそういうさりげないアドバイスや声かけで立ち直れたり、就活に新しい風を吹き込めることがない!!!!!

なので、一人で悩んでしまって、負のスパイラルループにハマる友人もいた。

そういう孤独で辛い就活っていうのも、かなり影響の一つだとは思って欲しい。


その 選考フローが謎

新型コロナウイルスの影響により、この予定は変動する可能性があります。』

という魔法の言葉により、全く意味をなさないHP記載の選考フロー。笑

仕方ないこととはわかっていても、こっちだってなるべく受けれるように予定立てたいんじゃボケー!とキレたくなる。誰も悪くないことだこれはうん。

あと、選考についての虎の巻、(一次面接は人事の人で〜とか)が無駄になることもあり、なんかすこし悲しい。


その6  採用がなくなる

採用・内定取り消しは毎年話題になることではあるのだが、やはりコロナ不況の煽りは感じてしまう。

割と名の通った企業ですら、今年は採用取り消します、という話が多くあった。しかも、5月6月頃になって頻発し、選考が進んでいるにも関わらず中止になった。思わず、時間を返せ!と言いたくなった。


その7 就活の長期化

21卒はオリンピックがあるから早期化するだろうという見立てが恐ろしく外れた。

企業もおそらく、どのくらいとるのか、に悩んだ結果、書類選考の結果が来るまでに2ヶ月近くを要したこともあった。

加えて、オンライン面接を取り入れたかどうか、選考を元々いつから始めていたかによる内定だしの差が大きいと感じた。10社受けて1社内定でても9社書類すらまだ!みたいな状況も起こり得ていた。



次に、良い影響について。


その1  お金と時間がかからない

これはとても大きかった。

東京しか説明会ないのか…時間もお金もないから選考受けるの辞めようかな、と例年なら思っていたかもしれない企業の説明会や選考がオンラインになり、自分の応募する企業の幅が広がった。うまく時間が合えば、1日に4つくらい説明会を受けることもできるし、面接の時間がシビアでも何とかなる。ありがとう御社!


その2 オンライン説明会最高

その1の利点にもうちょっとプラスしたい。

オンラインだとアーカイブを残してくれる企業が多く、時間がなくても後から見たり、ゆっくりメモしながら見ることもできた。

また、配信媒体としてYouTubeを利用している企業も多くあり、就活生側は匿名な場合も多かった。そのコメントの質問に対して答えてくれる場合もある。基本、就活では『福利厚生や待遇について聞くのは失礼』といった風潮があり、評価に触ると質問することを避ける。しかし、匿名なのでそういった質問も気兼ねなくできた為、思わぬ収穫も多かった。(逆にそこでそのコメントを頑なに拾わない企業のことは訝しんだりしていた)

他にも、オンライン同士でつなぎ合って、海外に実際派遣されている社員の方にお話を伺えたり、広く話が聞けた事はとても有り難かった。


その3 オンライン面接最高

これもその1にプラスしていく。

交通費もそうなのだが、選考のために移動した現地での食費とか、スーツのクリーニング代とか、諸々浮いている。女子は特に、黒いスーツなんて就活生しか滅多に着ないのに、洗い替えを用意しなきゃなんて…と思っていたが杞憂に終わった。パンプスで歩き回ることによる靴ずれもなくすんだ。

改めて思うと、一次面接なんて、せいぜい15〜30分程度の企業がほとんどの中、会場に行くまで面接時間の何倍の時間を要し、交通費をだすのが少しアホらしいなぁと思ってしまった。


その4 企業の適応能力が垣間見えた

誰にとってもコロナはイレギュラーだったろう。だからこそ、そこにどうやって適応しているかを見ることで、企業に入社した後のイメージが湧くこともあった。

例えば、対面説明会からオンライン説明会にすぐに移行し、迅速に行える企業というのは(IT系だと当たり前かもしれないが)、後の選考でも柔軟に対応して頂けたと思う。

企業によって、就活生側がオンラインで不備なく受けれるように様々な配慮を頂いた。相手の立場にたってどこが不備になっているか予想ができる人が説明会や面接を運営しているか否かというのは、社員同士やお客様に向けて気遣いができる人がいるのかと言う部分に繋がるだろう。

また、パソコン操作について、ベテラン世代の社員が手取り足取り若手に聞きながら作業しているところもあれば、一番テキパキ動いているのが一番のベテランの社員、というところもあり、自分が若手になった時、自分がベテランになった時を想像する手立てにもなった。

そういった人の面だけでなく、行なっている業務自体もそうだ。例えば、ウチは普段はこういう商品Aが売りだけど、コロナの影響で商品Bが売れているので、Bの製造を増やしている。Aが売れなくても、Bがあるので倒産しません。というような、業務的にどのような臨機応変さを見せているのかという部分も様々まで伺えて、純粋に面白いなー!と思っていた。


その5  あんまり病まなかった

これも個人差甚だしく、さっきと言ってること違うじゃねぇかと言われるかもしれない笑

移動が少なかったおかげで体力的にもキツくなかったし、よく寝れた。幸い筆者はゴテゴテのオタクだったので、消費するコンテンツが無限大にあり、息抜きと言いながらアニメをワンクール見る時間も十分にあった。おかげで、HPもMPもフル充電で就活に臨めた。(主にライブが自粛でなかったり)お祈りされたことでのダメージ蓄積も少なく終えれたのはよかったと思う。




こうやって書き出してみると、デメリットもメリットも膨大にあったなーと思う。


オンライン面接は、就活生側の利点は多いのでは?と思うものの、企業側からすれば、その人の人柄がみたい一次面接において、面接前後の行動等が見れないのは選びにくいのではないかと思ったりもする。

とはいえ、オンラインだって選択肢としてありありのあり!全然出来るやん!というのは実感したので、企業は積極的にニューノーマルな就活を考えて欲しいなと思う。


こんな対面で会えないなかでも、助けてくれた人はたくさんいた。企業人事の方はもちろんのこと、特に、大学にはお世話になった。私の大学は対応がかなり良かった。 

オンライン設備を整えるための給付金の迅速な配布、オンラインでの就職相談、オンラインでの生徒交流イベントの設置等々。この大学で良かったな〜と思えた瞬間であった。


私自身、コロナがなけりゃーなーと思う部分も沢山あったが、今更言っても何も変わらないし、こんな風に話のネタにはなってくれたので面白い就活であった。